中間検査に必要な工事写真に関する基礎知識│円滑な申請の方法
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新築工事においては一部例外を除き、「中間検査」が必要と建築基準法で定められています。検査の申請は建築主の義務で、その際には工事写真が必要になります。
一般的に工事途中で行われる検査のことを総称して中間検査と呼ぶことがありますが、この記事では、建築基準法に基づく中間検査に求められる工事写真の概要と、申請作業を円滑にする方法をご紹介します。
目次
中間検査とは
「中間検査」とは、新築工事の中間工程が完了した時点で、建築主事が建築主からの申請を受けて実施する検査のことです。なお、完工時に実施される「完了検査」とは区別されます。
建築基準法7条の3に定められており、阪神淡路大震災で多数の建物が倒壊したことを受け、施工途中での検査の重要性が高まったことから、建築物の安全性を高めるために1999年に新設された制度です。
建物を新築する際の中間工程のことを特定工程といい、中間検査はこの建築基準法に基づく特定工程の他、各都道府県や市区町村が判断して定めた特定工程があります。
具体的には、3階以上のRC造共同住宅の床・はりの配筋工事の工程および、特定行政庁が指定した工程で、建築主はその工事を終えた日から4日以内に建築主事に対して中間検査を申請します。建築主事は申請到達から4日以内に検査を実施する必要があります。
中間検査を実施し、当該建築物が建築基準法に適合していることが確認された場合、建築主事は建築主に対して「中間検査合格証」を交付します。中間検査に合格できない場合は、以降の全工程を停止しなければなりません。
中間検査を義務付ける建築物は、特定行政庁が決定できると定められているため、工事ごとの詳しい確認については各自治体の建築確認窓口に問い合わせる必要があります。
建築基準法7条の3の全文を以下に抜粋します。
(出所:e-gov 法令検索「昭和二十五年法律第二百一号 建築基準法」)
“
(建築物に関する中間検査)
第七条の三 建築主は、第六条第一項の規定による工事が次の各号のいずれかに該当する工程(以下「特定工程」という。)を含む場合において、当該特定工程に係る工事を終えたときは、その都度、国土交通省令で定めるところにより、建築主事の検査を申請しなければならない。
一 階数が三以上である共同住宅の床及びはりに鉄筋を配置する工事の工程のうち政令で定める工程
二 前号に掲げるもののほか、特定行政庁が、その地方の建築物の建築の動向又は工事に関する状況その他の事情を勘案して、区域、期間又は建築物の構造、用途若しくは規模を限つて指定する工程
2 前項の規定による申請は、特定工程に係る工事を終えた日から四日以内に建築主事に到達するように、しなければならない。ただし、申請をしなかつたことについて国土交通省令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない。
3 前項ただし書の場合における検査の申請は、その理由がやんだ日から四日以内に建築主事に到達するように、しなければならない。
4 建築主事が第一項の規定による申請を受理した場合においては、建築主事等は、その申請を受理した日から四日以内に、当該申請に係る工事中の建築物等(建築、大規模の修繕又は大規模の模様替の工事中の建築物及びその敷地をいう。以下この章において同じ。)について、検査前に施工された工事に係る建築物の部分及びその敷地が建築基準関係規定に適合するかどうかを検査しなければならない。
5 建築主事等は、前項の規定による検査をした場合において、工事中の建築物等が建築基準関係規定に適合することを認めたときは、国土交通省令で定めるところにより、当該建築主に対して当該特定工程に係る中間検査合格証を交付しなければならない。
6 第一項第一号の政令で定める特定工程ごとに政令で定める当該特定工程後の工程及び特定行政庁が同項第二号の指定と併せて指定する特定工程後の工程(第十八条第二十二項において「特定工程後の工程」と総称する。)に係る工事は、前項の規定による当該特定工程に係る中間検査合格証の交付を受けた後でなければ、これを施工してはならない。
7 建築主事等又は前条第一項の規定による指定を受けた者は、第四項の規定による検査において建築基準関係規定に適合することを認められた工事中の建築物等について、第七条第四項、前条第一項、第四項又は次条第一項の規定による検査をするときは、第四項の規定による検査において建築基準関係規定に適合することを認められた建築物の部分及びその敷地については、これらの規定による検査をすることを要しない。
8 第一項第二号の規定による指定に関して公示その他の必要な事項は、国土交通省令で定める。
”
中間検査の申請には工事写真が必要
また、建築主事(または指定確認検査機関)による検査方法は「国土交通省告示第835号」にまとめられています。「国土交通省告示第835号」は、建築基準法の第18条の3「確認審査等に関する指針等」に基づくものです。
(検査方法の抜粋)
- 工事監理の状況(第19号様式第4面及び第26号様式第4面)の書類検査
- 写真による検査(製造者認証等、検査の特例を受ける場合)
- 特定行政庁が工事監理の状況を把握するため特に必要があると認めて規則で定める書類による検査
- 目視による検査
- 簡易な計測機器等による測定による検査
- 建築物の部分の動作確認による検査
- その他の方法
なお「①工事監理の状況」について、具体的な検査対象は以下の通りです。
- 敷地の形状、高さ、衛生及び安全
- 主要構造部及び主要構造部以外の構造耐力上主要な部分に用いる材料(接合材料を含む)の種類、品質、形状及び寸法
- 主要構造部及び主要構造部以外の構造耐力上主要な部分に用いる材料の接合状況、接合部分の形状等
- 建築物の各部分の位置、形状及び大きさ
- 構造耐力上主要な部分の防錆、防腐及び防蟻措置及び状況
- 天井及び壁の室内に面する部分に係る仕上げの材料の種別及び厚さ
- 開口部に設ける建具の種類及び大きさ
- 建築設備に用いる材料の種類並びにその照合した内容、構造及び施工状況(区画貫通部の処理状況を含む)
これを受けて、たとえば山梨県では、近年増加している欠陥住宅問題への対策として工事写真を提出を求めるようになりました。この要請はホームページにも記載しています。
提出する工事写真では、中間検査及び完了検査時のそれぞれで、建築士が適切に工事監理していることが確認されます。
このように建築主は工事写真を添えた書類をもって中間検査の申請を行う必要があります。
中間検査の申請時に必要な工事写真の例
中間検査時の工事写真については、特定行政庁の例をいくつか紹介します。
山梨県の例
出所:中間検査・完了検査時の工事写真について 添付が必要な工事写真 中間検査申請時
- 基礎の配筋工事終了時(全体で2~3枚程度)
- 基礎配筋後の全景
- 底盤及び一般箇所(形状寸法・鉄筋径・本数・ピッチ、かぶり等)
- ホールダウン金物、アンカーボルト設置状況
- コンクリート打設後の全景
- 構造耐力上主要な軸組若しくは耐力壁工事終了時(全体で3~4枚程度)
- 全景
- 柱(たて枠)、梁及び桁の部材寸法、位置、仕口・継手の状況
- 土台、床組の部材寸法、取付け状況
- 筋かいの部材寸法、位置、仕口の状況
- 屋根の小屋組の工事終了時(全体で2~3枚程度)
- 小屋組の全景
- 小屋組の部材寸法、接合金物などの取付け状況
群馬県みどり市の例
- ①基礎の配筋工事終了時(全体で2~3枚程度)
- 基礎配筋後の全景
- 底盤及び一般箇所(形状寸法・鉄筋径・本数・ピッチ、かぶり等)
- ②構造体力上主要な軸組若しくは耐力壁終了時(全体で3~4枚程度)
- 全景
- 柱(たて枠)、梁及び桁の部材寸法、位置、仕口・継手の状況
- 土台、床組、火打梁、アンカーボルト等の部材寸法、取付け状況
- 筋かいの部材寸法、位置、仕口の状況
- ③屋根の小屋組の工事終了時(全体で2~3枚程度)
- 小屋組の全景
- 小屋組の部材寸法、接合金物などの取付け状況
中間検査の工事写真撮影・管理には体制が求められる
中間検査の申請のために必要な工事写真は条件が詳細に定められています。また、検査を通過できなければその後の工程がストップしてしまうため、ミスが許されません。さらに工事完了から4日以内と短期間で申請を到達させる必要があり、きわめて円滑な撮影・管理・提出の体制が求められます。
一般的には、デジタルカメラを用いて工事写真を撮影する方法が採用されます。事務所にデータを持ち帰ってからパソコンに画像を取り込んで、エクセル等で申請書を整理する方法です。
ただし、スマホが浸透した現在では、デジカメの運用に以下のようなリスクや非効率が発生します。
- 現場で撮影した写真に不足や不備が生じる
- 撮影したデータを誤って消去したり紛失したりしてしまう
- 事務所にデータを持ち帰らないと申請書の作成ができず時間がかかる
- 撮影された写真を整理したり選定したりする作業に時間がかかる
- 不足や不備に気が付いても撮り直しが翌日以降になる
中間検査への対応を円滑化するためには、工事写真の撮影から提出までの過程にスマホアプリを用いることが効果的です。
まとめ:中間検査の工事写真撮影には工事写真アプリ
上述のリスクや非効率を排除し、中間検査の工事写真撮影・管理・提出を円滑化する最良の方法は、スマートフォンやタブレットで利用できる「工事写真アプリ」です。
工事写真アプリなら、誰もが使い慣れたスマート端末で直感的な操作ができ、撮影から写真の整理、書面の作成まで、すべての作業が現場のモバイル操作で完結します。
しかも写真データはインターネットを通じて離れた場所からリアルタイムに確認できるため、現場で作成された書面を事務所ですぐに確認したり、現場で撮影後そのまま事務所で編集作業もできます。
完成した書面をスマホでPDF化して送信することもできるため、撮影・管理・提出までが従来の方法と比較して飛躍的に円滑化されます。
一部のアプリは無料で試せるため、費用面も安心です。
中間検査の工事写真については、工事写真アプリの導入による効率化をお勧めします。