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【公共工事の電子納品する工事写真】現場監督が抑えるべき撮影方法と使用可能な工事写真アプリやソフト要件とは?

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日々、写真の撮影と整理に時間がかかり、苦労を感じている方も多い「工事写真」。

現在、その「工事写真」は国や県などが発注する「直轄の公共工事」では、
撮影した工事写真を「CD-ROM(CD-R)」などにデータ情報として入れて「電子納品」することが必須となっています。

そして、いざ公共工事を請け負い「電子納品」の担当となった場合には注意すべきポイントがいくつかあります。

しかし、「工事写真の電子納品」に関する撮影要件など、その注意すべきポイントを知らなければ手戻りが発生し、撮影や写真整理を効率的にすることはできません。
また、うっかり工事写真の改ざんに該当してしまうこともありえます。

そこで今回は
まず、電子納品する工事写真の概要・撮影方法と納品までの流れを説明し、
次に、工事写真の撮影スピードと整理を劇的に効率化する電子小黒板付きのスマホアプリやソフトの仕組みを説明、
さらに、その活用方法までを紹介します。

公共工事の電子納品とは?電子納品する工事写真について

まず、公共工事の電子納品とは何なのかを説明します。

電子納品とは、図面や写真等を電子データとして提出することを義務づけられたものです。

国土交通省の「デジタル写真管理情報基準」に、デジタル写真の納品規則が細かく紹介されています。

>PDF資料リンク:デジタル写真管理情報基準 [国土交通省] (R2.3)

規則の項目として、納品する電子データの提出媒体の種類、ファイルの仕様、有効画素数、画像編集の不可などが挙げられます。

表:納品規則の項目例

納品規則の項目 要点
有効画素数 縦横比は3:4程度 ・100万画素~300万画素程度と明記
 ※サイズで900×1,200ピクセル程度~1,500×2,000ピクセル程度
電子媒体種類 MOディスク
(光磁気ディスク)
・比較的書き込みが高速
・書き換えが可能
CD-R ・記録したデータの変更ができない
・単価が安い
DVD ・電子媒体が複数に渡る場合は、発注者と受注者の協議によりDVD-R を使用することも可能
ラベル記載項目 電子媒体のラベル面
に記載する項目
・契約書の工事名称、現場代理人のサイン、主任監督員のサインなど

参考:デジタル写真管理情報基準

なお、「デジタル写真管理情報基準」では電子媒体についての記述は省略されてるので注意が必要です。

従来、「CD-ROM(CD-R)/MOは230MB以下」が原則であったものが、現在は「CD-R」以外にもより容量の大きい「DVD-R」での提出が主流化しています。

また、データが大容量となる場合には、発注者と受注者の協議により 「BD-R」 を使用することも可能です。

発注者は膨大な量の写真を保管してチェックするため有効画素数のあまり大きい写真は困りますが、小さすぎても確認しにくいため、

小黒板の文字が判読できることが指標とされ、縦横比は3:4程度とされています。
(100万画素~300万画素程度=900×1,200ピクセル程度~1,500×2,000ピクセル程度) 

通常の工事では工事写真を撮影した後、写真を整理して工事写真台帳を作成し、施主や元請けなどに提出したら工事写真に関する業務は完了します。

しかし、国や県などの直轄の公共工事において最終的に工事写真を電子納品まですることが求められている場合は、工事写真を撮影する前に電子納品の要件を満たすように撮影機器の日付設定、画質や撮影される写真のサイズ(比率)などを確認しておく必要があります。

工事写真の撮影から電子納品までの流れ

電子納品に関する従来の大まかな流れとしては、次の6つの流れとなります。

工事写真の撮影

デジタル写真管理基準に基づき、写真ファイル形式・画素数の設定を行ってから撮影する。

パソコン等への取り込み

撮影した写真をパソコンに取り込む。

デジタル写真の整理・保管

デジタル写真は、撮影位置や撮影状況の説明に必要な参考図と合わせてパソコンに整理する。

デジタル写真のJPGデータをパソコン内に整理・保管する

 

チェックと電子媒体への格納

工事写真を電子媒体で提出する際は、作業フォルダをパソコンなどのハードディスク上で作成し、電子納品チェックシステムや専用ソフトでウィルスチェックと電子納品成果のチェックを行った後に電子媒体に格納し、CDラベルを作成する。

工事写真をウィルスチェックと電子納品成果のチェックして電子媒体に格納し、CDラベルを作成

工事写真の提出

受注者は、工事完成時に工事写真の電子データを格納した電子媒体を発注元の監督職員に提出する。
 

ウィルスチェック

発注元の監督職員は、提出された電子媒体に対してウィルスチェックを行う。

ウィルスチェックソフトは特に特定しませんが、最新のウィルスも検出できるように常に最新のデータに更新したものを利用する。

従来は、撮影はデジカメで行い、デジタル写真データの管理をパソコンで行っていましたが、現在では、後述するスマホアプリやソフトによって手間が削減され、効率化することが可能となっています。

工事写真でやってはいけないこと

上図:工事写真の撮影でやってはいけないことの例

工事写真の撮影でやってはいけないことの例を以下の図に示します。

写真が暗く写ったために明るさを補正したり、指や異物が写真に入り込んだからといって、写真のトリミングや編集など改ざんに該当することはやってはいけません。

近年では、デジタルカメラの普及に伴って、工事写真のデジタル化が進んでいます。

さらに、スマートフォンなどの「工事写真アプリ」の出現によって、すべての工事写真がデジタル写真としてデジタル化したと言っても過言ではないでしょう。

デジタル写真の特長の一つとして、撮影後の編集の容易さが挙げられます。しかし、この編集の容易さについては工事写真管理の観点から利点と欠点の両面があります。

例えば、工事写真は作業途中の建設現場で撮影されるため、撮影条件が劣悪であることも多いです。

そのため、撮影部位の詳細や寸法の見やすさ、黒板文字の読みやすさなどの要求事項を最高の条件で撮影をすることは困難です。

デジタル写真であれば、再撮影だけでなく撮影後の編集によってこれらの欠点を補うことがある程度可能ですが、この「撮影後の編集」という部分に関しては、工事担当者の良心が大切となります。

2005年の国土交通省直轄工事において「工事写真の不正(改ざん)」が起こりました。
>PDF資料リンク:国土交通省大臣官房技術調査課 宮武晃司:デジタル工事写真の無断修正防止について,pp.25-27,建設マネジメント技術2006,1月号 参照

この件を受け、国土交通省の「デジタル写真管理情報基準(案)」の平成18年(2006年)1月改定から、「写真の信憑性を考慮し、写真編集は認めない」とされ写真の加工は一切できません。

公共工事に限らず、工事写真は工事経過の記録や品質管理を確認するための資料として重要で、適切な撮影と管理が求めらるため、写真の成否は撮影時にすべて決まることとなります。

改めて、「工事写真の電子納品」に関する撮影要件やチェックポイントを確認し、しっかりした撮影技術を身につけて後から撮り直ししなくてすむようにすることが大切です。

工事写真の正しい撮影方法とは?

公共工事の工事写真には、「証拠」が求められています。客観的事実を誰が見ても分かるように撮る必要があります。

工事写真の基本としてよく言われている5W1H、「いつ」「どこで」「誰が」「何のために」「(どのように)どうした」のかを厳守し、誰が見ても納得できるように撮らなければなりません。

もちろん、1枚の写真で5W1Hをすべて表現することは、とても難しいことです。

そこで、工事写真の撮影は最低限、どのように工事が行われたかを示すことに努めて撮影することが大切です。

「わかりやすい写真」を撮影するには、次の3つのポイントが大切です。

分かりやすい角度と位置(ベストアングル)を探す


左上:鉄筋が隠れているNG例     右上:後ろの鉄筋本数まで確認できる例     


工事者が撮影した写真は、アングルが本人の主観的なものになり、第三者が見たときに分かりにくいことがあります。

例えば、鉄筋工事の柱の撮影では、主鉄筋の本数とスパイラル上に取り付けられているフープ筋の間隔が設計通りに設置されているかを証明する写真を撮ります。

ここで大切なのが、正面から撮りすぎて鉄筋が隠れてしまっていないか確認することです。

隠れてしまっている場合、ほんの少しのカメラ位置(アングル)を変えるだけで解決するため、撮影時にはしっかり確認します。

 

黒板と測定尺での補足

工事写真を見て、指摘される最も多い事項は黒板に関するものです。
黒板の位置が悪いことや、記載されている内容が読み取れないこと、遠景が遮断されていることなどが原因です。

画像が読み取れない例

前述したように、写真だけで説明しきれない5W1Hの補足をしてくれるのが「黒板」と「測定尺」です。

ここで改めて、5W1Hとは、下記のような黒板に書くべき「いつ」「どこで」「誰が」といった内容のことです。
・What 何を(工事名称・工種を記載)
・Where どこで(工事場所や部位を記載)
・When いつ
(撮影日を記載)
・Why 何のために(形状寸法や撮影内容を記載)
・How どのように(施工状況などを記載)
・Who 誰が(請負業者名を記載)

黒板を正確に書くことで、工事の目的を確認することができます。
ただし、黒板を撮ることに夢中になって肝心の被写体を黒板で隠してしまわないように注意します。

黒板の書き方例

また、測定尺によって出来形の「測定」を数値化して見せることができます。
ちなみに測定尺は、リボンテープ、検測ロッド、スタッフ、ノギスなどの使用が一般的です。

ここで、測定尺は被写体の形状、寸法および許容寸法の単位が正確に読み取れるように選択します。
特に、カメラアングルによって誤差が生じやすいため、注意が必要です。

測定値が写真で読み取り易いように、目印としてポールやあて木などを使用するのも有効です。
もし、現場で制作した測定器具を使用する場合には、測定尺の目盛を証明する写真を撮影しておきます。

出来形を測定する測定尺の例

 

黒板が用意できないときの撮影

黒板は、状況を説明するための掲示物です。必ずしも黒板である必要はありません。

何のために撮っているのかを証明することが目的なので、ホワイドボードでも紙に書いたものでも問題ありません。

必要なことはつまり、目的や被写体に応じて選定して撮影することです。

例えば鉄筋材の受入れ時には通常、材料受入れ状況の写真とロールマークの詳細写真を撮影します。

このとき、搬入時の荷札(タグ)が黒板代わりにもなります。

鉄筋材料の搬入時の荷札(タグ)とロールマーク

 

改ざんチェック防止システムの存在と電子小黒板について

スマートフォンやタブレットなどの専用アプリで撮影する写真には、デジタルの黒板である「電子小黒板」を挿入し、「デジタル工事写真」を撮影することができます。

工事写真アプリと電子小黒板の挿入の例


元々は前述したように、デジタル工事写真の改ざんが問題となった2005年の事例を受け、国土交通省はその後一切のデジタル写真の加工を禁止していました。

しかし、業界が一丸となり、2017年の2月に電子小黒板を写真に組み込んだ状態は写真改ざんでないと国土交通省の判断として下され、一気に電子小黒板が現場に普及しました。

普及したポイントは、写真撮影の省力化だけでなく、電子黒板に入れている情報を元に写真台帳が作成できるなど、撮影から写真整理までにかかる労力と時間が画期的に短縮され、メリットが大きかったところです。

また、問題となっていた「改ざん」の部分では、JACIC(一般財団法人 日本建設情報総合センター)の「デジタル工事写真の高度化に関する協議会」にて、デジタル工事写真の信憑性確認(改ざん検知機能)に関する仕様の検討が実施され、信憑性確認(改ざん検知機能)を搭載したアプリケーションやソフトウェアには「JACIC」のロゴが掲載されています。

すなわち、このロゴが搭載されているアプリケーションで撮影した工事写真は、その「信憑性確認」機能により写真の信憑性が担保されていることになります。

※ JACIC(一般財団法人日本建設情報総合センター)の「デジタル工事写真の高度化に関する協議会」は、令和3年4月1日より新組織のJ-COMSIA「一般社団法人 施工管理ソフトウェア産業協会」へ移行

写真の信憑性が確保されたことで公共工事の直轄工事においての「電子黒板」の使用が許可され普及が進み、2021年現在では公共工事の直轄工事において「電子小黒板の利用が全国で許可」されています。

公共工事の直轄工事で電子小黒板を許可している都道府県

公共工事の工事写真の電子納品対応している電子小黒板付きの工事写真アプリや入力ソフトとは?


工事写真の撮影はこれまで、作業者が工事名や被写体の実測寸法、略図などを黒板に手書きして、デジタルカメラなどで撮影していました。

一方、 電子小黒板を挿入できるスマートフォン等の専用アプリケーションなら、あらかじめ当日撮影する全ての電子黒板を用意しておいて撮影に臨むことも可能となります。

また、黒板を持つ作業員(補助員)が不要で、撮影者1人だけで写真を撮ることができます。加えて、高所や狭小地などでも黒板を持つことがないので、安全性も高まります。

では、国や県の直轄の公共工事における電子納品に対応しているアプリケーションやソフトがどのようなものかというと、前述した「信憑性確認(改ざん検知機能) 」の機能という「共通規格」を搭載していているものに限ります。

実際にそういった「電子納品に対応したアプリケーション」の選定から撮影、電子納品までの流れは、以下の(1)~(3)の流れとなります。

(1)受注者が対象工事で使用する機器を発注者へ提示・決定
信憑性確認(改ざん検知機能)検定に合格している「出力ソフトウエア(写真撮影アプリケーション)」と「入力ソフトウェア(写真管理ソフトウエア)」を受注者が発注者へ提示・決定する。

 
(2)出力ソフトで工事写真撮影
決定した機器を用いて写真を撮影する。この時、電子黒板を用いると撮影と同時に電子小黒板の情報が写真の中に情報として格納される。

 
(3)撮影後の写真を入力ソフトで写真の信憑性確認と不足情報付加
撮影後の写真を「入力ソフト」で写真に改ざんが無いかチェックを行うと同時に不足情報があれば追記して、受注者へ工事写真とチェック結果を納品する。


また、従来のデジタルカメラに比べて、撮影アプリケーションで撮影から電子納品まで行った場合にどのような違いがあるのか説明します。

従来までは、デジカメで撮影した工事写真は、保存された電子納品に必要な情報が工事写真自体に格納されないので、パソコンなどの写真管理ソフト(出力ソフト)を用いて必要情報を入力する労力が大きく発生していました。

しかし、「小黒板情報の電子的記入」と「信憑性確認(改ざん検知機能)」の2点の機能を持つ「共通規格」の撮影ソフトが出現によって、写真管理ソフトにおける必要情報入力の手間を大きく削減できるようになりました。 

これまでは、蔵衛門御用達などの連携が可能な同じ会社の撮影ソフトと写真管理ソフトを両方使用する必要がありましたが、「共通規格」の撮影ソフトであればどのソフトでも撮影時の電子小黒板の内容情報が格納された工事写真が出力され、

他社のソフトであっても同様に「共通規格」を持っている写真管理ソフトへ読み込むことが可能で、電子納品まですることができるようになりました。

建設の現場では、似たような被写体が延々と繰り返し続きます。例えば階高の大きい工事現場などではなおさらです。

写真撮影時は、たいてい現場全体が忙しく、多くの人がせめて黒板の手間を省力化したいと考えます。

このような手間を解決するため、前述したようにスマートフォンや専用タブレットにおいて「撮影アプリケーションによる電子黒板の活用」が始まり、業務改善に効果を発揮しています。 

では、数ある撮影アプリの中から、どのように最適なものを選べば良いでしょうか?

ポイント1.信憑性確認機能(改ざん検知機能)が搭載されているか
直轄の公共工事で電子納品が求められる場合には必須となります。

また、委託先に写真を提出する場合、信頼性の観点からもおすすめです。 

ポイント2. 価格と機能の範囲
業界や業種、施主の要望や写真の目的や頻度によって必要な機能の範囲は異なります。

無料から公開されている機能で充分である可能性もあります。

いきなり有料アプリを導入したものの、使い勝手がマッチせずに機能の一部しか利用できていないなどはよく耳にするところです。

ポイント3.自身の目的に応じた機能を持つものを選択する
工事現場では慢性的な人手不足が続き、一人現場も増え、黒板を的確に保持して挿入することも困難になってきていますが、黒板を撮影することと工事の質には直接関係がないので、

写真の信憑性を確保した上で専用アプリを活用してより簡便な撮影方法や写真の共有・確認方法を取ることができれば相当な省力化が期待できます。

大切なのは、アプリによって異なる特徴です。

例えば、より多くの工種に対応できるように黒板のレイアウトが豊富であったり、黒板の出来形の挿入機能が充実しているものもあります。

しかし、ポイント2で説明したように、機能が多すぎても使いこなすことは難しくコストも大きくなってしまい
ます。

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