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工事成績評定実施基準とは?考査項目別運用表の読み解き方と90点超を狙う実務ポイント

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公共工事の入札評価や企業格付けに影響する「工事成績評定」について、工事成績評定実施基準では何が評価されるかわからない、採点ポイントが曖昧で対策しづらいと感じていないでしょうか。

そこでこの記事では、2025年最新の実施基準を踏まえ、採点体系・考査項目の読み解き方・90点以上を狙う実務のコツをわかりやすく解説します。初めて制度対応をする方は、評定点を高めるための参考にしてみてください。

国土交通省が定める「工事成績評定実施基準」とは?

工事成績評定実施基準とは、公共工事における以下の実施状況を、公的機関が統一基準で数値評価する制度です。

  • 施工品質
  • 安全管理
  • 工程管理
  • 提出書類整備

特に地方整備局の定める「地方整備局工事成績評定実施要領」では、次の目的が明記されています。
工事に関する技術水準の向上に資するとともに、請負業者の適正な選定及び指導育成を図ることを目的とする。
(引用:国土交通省「地方整備局工事成績評定実施要領|第1条」

なお、評価の対象工事は、河川・道路・海岸・砂防・ダム・公園など国交省管轄の土木工事が中心です(第2条)。評定者は技術検査官・総括技術評価官・主任技術評価官と定められています(第4条)。

また、評価は工事ごとに個別で実施され、実施要領に添付されている「採点表」「細目別評定点」「出来形バラつき基準」「施工プロセスチェックリスト」より、基本項目や創意工夫、社会性、新技術の導入といった加点要素も考慮し、100点満点で評価していきます。

工事成績評定が建設企業に与える影響

工事成績評定は、単なる施工評価ではなく企業格付け(経営事項審査=経審)や総合評価方式入札の採点につながる指標です。
参考として、工事成績評定点が高い企業は次のメリットを得られます。

評価が影響する領域

高評価によって得られるメリット

企業格付け(経審)

工事成績が施工能力評価点に反映され、経審点数がUPし、入札ランク向上につながる

総合評価方式入札

工事成績が技術点として評価され、同条件の競合より落札優位性が高まる

継続案件・大型案件受注

発注者は過去評価を参考にするため、高評価企業はリピート・大型案件指名に強い

評価制度・加点制度(DX・働き方改革)

ICT施工、週休2日、若手配置、創意工夫等が加点対象となり、取り組みが実績として可視化される

実務上、平均点80点以上の企業は入札競争に強いと言われています。また、85点超の継続平均がある企業は「評価が高く信頼できる企業」と見なされやすいのが特徴です。

工事成績評定に関連する公式文書とマニュアル体系

工事成績評定制度は、単一文書ではなく複数の基準・要領・運用表で構成されています。
制度の全体像を理解しないまま現場運用に入ると、提出漏れや採点ロスにつながるため、まず体系整理が重要です。

請負工事成績評定要領とは?

請負工事成績評定要領は、成績評定制度の基礎ルール(上位文書)です。評価対象範囲・評定時期・修正手続きまで定めています。
原則、契約金額500万円以上の工事(建設業許可業者が取得できる工事)が対象となります。
(出典:国土交通省「請負工事成績評定要領」

工事成績評定実施基準とは?

工事成績評定実施基準は、「請負工事成績評定要領 第3条(後述)」にもとづき、成績評定の具体的な運用方法を定めた文書です。
評定者(技術検査官・総括技術評価官・主任技術評価官)は、この基準と考査項目別運用表に沿って評価します。

項目

内容

評価対象

工事成績採点表に基づき採点

評価方法

考査項目別運用表に沿って判断

記録様式

工事成績評定表(別記様式第1)

加点要素

創意工夫・社会性(提出された場合)

補助資料

チェックリスト・出来形ばらつき基準(別紙)

(出典:国土交通省「工事成績評定実施基準」

また、上記の実施基準をもとに、地方整備局ではその地域に合わせた運用ルール・細則として「地方整備局工事成績評定実施要領」なども公開されています。

工事成績評定マニュアル(運用基準・地方自治体版)の位置づけ

工事成績評定実施基準は、さらに県や市などの自治体によって、個別の工事成績評定マニュアルが運用されているケースもあります。以下に例をまとめました。

マニュアルの名称は、自治体によって異なります。基本は工事成績評定実施基準がベースとなっていますが、地域ごとに評価項目・基準が異なる場合もあるため、対象工事エリアのマニュアルをチェックすることも重要です。

工事成績評定実施基準の採点の仕組み

工事成績評定は、感覚的に点数を判断するものではなく、考査項目別運用表、採点表、評価様式に基づき、数値化された方法で評価を下します。
以下より、採点の仕組みをわかりやすく解説します。

7項目の評価体系

工事成績評定は、国土交通省が定める標準項目にもとづき7分類で評価されます。

No

評価項目

内容の意味

配点の目安

評価のポイント

1

施工体制

体制・配置技術者・管理体制が適切か

7.4点

技術者配置、体制整備、管理書類等

2

施工状況

施工管理・工程管理・安全・対外対応

33.6点

品質管理・工程遅延防止・安全体制

3

出来形・出来ばえ

仕上がり品、品質、寸法精度

40.8点

仕上げの精度、施工品質、美観等

4

工事特性対応

現場条件(狭い・交通量多い等)への対応力

7.3点

制約対応、工事難易度への工夫

5

創意工夫

施工改善、NETIS、ICT活用などによる加点

5.7点

BIM/CIM・ICT・新工法提案

6

社会性等

地域貢献・環境配慮・働き方改革

5.2点

地域調整、週休2日、担い手確保

7

法令遵守

違反があれば減点(最大ペナルティ)

調整評価

労災・書類不備・事故・通報案件等

参考:国土交通省「工事成績評定実施基準」

なお、点数は業務に対応する「主任技術評価職員」「総括技術評価職員」「技術検査職員」に分けて実施されます。
特に、施工状況や出来形の評定で70点を超えるなど、構造物の品質が重視されます。

考査項目別運用表とは?

出典:国土交通省「工事成績評定実施基準」

考査項目別運用表は、工事成績評定において「どの観点で、どの程度できていれば何点になるか」を示した採点基準表です。
施工管理、工程、安全、出来形、創意工夫などの評価ポイントが細分化され、A~Eなどの段階で評価されます。監督職員や検査官ごとに判断がバラつかないよう、統一基準として使われる公式のチェックマニュアルであるため、企業側は、成績向上のために各項目の評価基準を理解しておくことが重要です。

また、工事成績評定では出来形写真の品質が評価項目につながります。出来形写真整理のコツについて知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。

出来形写真とは?公共工事で必要な理由と正しい撮影方法・黒板の書き方・管理のポイント

何点以上から高評価?平均点と認定制度

一般的に、工事成績評定は80点以上が高評価(優良工事)とみなされます。
実際、地方整備局などでは、80点以上を獲得している工事業者を「工事成績優秀企業」として認定する事例も多くあります。
(参考:東北地方整備局「令和7年度 工事成績優秀企業を認定しました 」

なお、競争入札のなかでも企業の能力や提案力を評価する「総合評価方式」では、マニュアルにて「過去5年間の工事成績評定点の平均点」が以下の点数につながります。

工事成績評定

総合評価方式の点数

75点以上

5点

65点以上75点未満

2点

65点未満

0点

出典:国土交通省「地方公共団体向け総合評価実施マニュアル 改訂版」

よって、総合評価方式の入札にチャレンジする企業は、少なくとも75点以上の評定点獲得を目指しましょう。

工事成績評定で高得点を取るための実務ポイント

工事成績評定点は、地方整備局全体の平均が73.6点だと言われています。
(参考:国土交通省「工事成績評定点の分布状況」

しかしこれでは、5点満点を獲得できる75点には届かず、総合評価方式で競合他社と差ができてしまいます。そこでここでは、3段階に分けて高得点を取るための実務ポイントをまとめました。

【施工前】提出書類・協議事項

施工前の段階で特に重要なのが、施工計画書の精度と提出タイミングです。
発注図書の意図を踏まえた計画、周辺環境への配慮、リスク対策、工程制約への対応などを盛り込むことで、評価者の信頼度が上がります。

また、協議内容は記録化し、打合せ簿で整理・更新する習慣が必須です。さらに、施工体制届、材料証明、配置技術者の資格証明など、「抜け漏れなく、期限内に提出する」だけで点数ロスを確実に防げます。

【施工中】安全管理・出来形・工程

施工中は、安全管理・出来形管理・工程遵守の3つに気を付けることが重要です。
安全面ではKY活動、パトロール、教育記録、是正履歴を「形だけでなく証跡」で残すことが欠かせません。出来形・品質は日常管理をこなし、試験結果や写真・帳票を施工計画と照らし合わせて整合性を確保しましょう。

また、工程管理は遅れを出さないことが減点されないために重要です。遅延が発生した場合でも、原因分析・対応策・証跡の3点を揃えればマイナス評価を防げます。ICT施工・週休2日・建設副産物管理の実施は加点対象となるため、積極的に活用しましょう。

【竣工時】提出書類の整理で点数底上げ

工事が順調に進んでも、竣工書類の精度が低ければ評価は伸びません。
特に、施工中の出来形・品質管理結果が竣工書類と一致していることが重要で、写真台帳・材料証明・試験成績表・施工記録の整理が必須です。

また、完成検査に向けた事前自主点検と、過去検査指摘事項の反映は加点・減点防止のポイントとなります。創意工夫・地域貢献・若手育成・ICT活用などの加点対象項目は、証拠資料として「提出するかしないか」で点数差が出る要素であるため、必ず成果としてまとめて添付しましょう。

【90点目標】工事成績評定の加点につながる取り組み一覧

加点項目は年々「技術力→DX→働き方改革」へシフトしています。特にICT施工、NETIS技術活用、週休2日、担い手確保施策は加点対象として効果が大きい要素です。
ここでは、工事成績評定点数を90点まで高めたいという方向けに、加点要素となるポイントを紹介します。

ICT施工(遠隔臨場・3D管理)

ICT施工は、新技術の導入という点で加点されやすい領域です。
遠隔臨場(クラウド映像記録)、3次元施工管理、出来形測定の省力化、電子納品まで一連のICTプロセスが活用されている場合、評価点が上がりやすくなります。また、「一部活用」よりも「起工測量〜完成までのフルICT活用」が高評価につながるポイントです。

(参考:国土交通省「i-Construction2.0 活用工事成績評価要領を策定」

NETIS活用

NETIS技術の活用を提案し、実際に活用効果が確認できれば、評定点の加点幅が大きくなります。

【NETISとは】

国土交通省が運用する新技術の活用のためのデータベースのこと
(参考:NETIS公式サイト

また、NETIS技術は「事後評価済みか」「有用技術か」「効果検証結果は十分か」で評価点が変動します。さらに、発注者指定のNETIS技術は加点対象外のため、受注側が自主提案し採用された技術のみ評価対象となります。
(参考:国土交通省「公共工事等における新技術活用システム」

週休2日制度の導入

働き方改革が施行されたことに伴い、週休2日制度の導入が高評価につながります。

たとえば、完全週休2日型、交替制、ブロック単位休工など、現場条件に応じた制度設計が評価されやすくなっています。また、「実施した事実」だけでなく「工程・安全・品質を維持しながら成立させたプロセス」も評価対象です。工程調整記録・休工計画・労務管理資料を整えましょう。
(参考:国土交通省「働き方改革及び週休2日に係る工事成績評定の取扱いについて」

若手・女性登用と働き方改革

担い手確保と労働環境の改善も評価項目が用意されているため、加点を狙いたい企業に最適です。
たとえば、若手技術者の配置、女性技術者の参画、資格取得支援、業務分担の最適化、教育体系整備などの仕組み化が評価対象となります。さらに、産休・育休制度活用、現場事務所・トイレ環境整備、オンライン会議活用など、「現場で働きやすい状態を作った証跡」が加点の決め手です。

(参考:国土交通省「働き方改革及び週休2日に係る工事成績評定の取扱いについて」

点数が伸びない原因とよくある減点パターン

工事成績評定で思うように点数が伸びない理由は、施工そのものより運用・証跡・対応姿勢にあります。以下に、よくある減点パターンをまとめました。

  • 提出書類の不備(施工計画・写真台帳・打合簿整理不足)
  • 工程遅延・改善指示への対応遅れ
  • 安全対策不足・事故・近隣トラブル
  • 品質検査でのばらつき、出来形精度不足
  • 週休2日・ICT施工・NETIS活用など加点策の未実施

これらは「現場や工事品質が悪い」のではなく、設計図書との整合性・証跡整理・協議履歴管理が弱いことが原因です。評価者は書類と結果の一貫性を確認するため、施工前から意識的に管理体制を整えることが高得点への近道です。

写真管理が評価に影響する理由

工事成績評定では、施工の良し悪しだけでなく施工内容を証明できるかが重要視されます。そのため、特に写真管理は、出来形・品質・安全対策の「客観的証拠」となるため、評価点に直結します。

  • 撮影位置・角度・必要項目が不足
  • 黒板(電子黒板含む)に誤記・不統一がある
  • 事後撮影で施工過程が証明できない
  • ファイル名や整理ルールがバラバラ
  • 遠隔臨場対応データが残っていない

実際、「工事成績評定実施基準」でも、評価項目のなかに写真整理などが複数設けられています。
出典:国土交通省「工事成績評定実施基準」

写真は監督官が現場にいなくても施工状況を判断できる唯一の証跡です。
整理された写真台帳は、出来形の精度・安全意識・現場管理能力の高さを示すため、評価者の印象を大きく左右します。

写真管理DXで評価アップ(ミライ工事写真)

工事成績評定では「施工が正しいか」だけでなく、その証拠を適切に残しているかが評価されます。つまり、写真管理の精度=信頼性の高さとして採点に影響します。
しかし現場では、黒板書き直し・分類・台帳作成・共有漏れなど、手作業によるミスや負担が減点要因になりやすいのが現実です。
そこで効果的なのが写真管理DX。現場で撮影した写真が自動整理され、電子小黒板・台帳出力・クラウド共有まで完結する仕組みを整えることで、属人化・ミス・手戻りを防ぎ評価向上につながります。

特にミライ工事写真は、NETISの新技術として登録されており、スマホだけで撮影~台帳作成〜共有まで完了できます。公共工事基準対応で評価対策にも最適ですので、まずは無料プランからスタートしてみてはいかがでしょうか。

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まとめ|制度理解×現場DX=評価・入札の競争力向上

工事成績評定は「制度理解」「現場運用」「証跡管理」の3つが揃って初めて点数につながります。
特に近年は、ICT施工・遠隔臨場・写真管理DXなど、業務効率化と品質向上を両立できる仕組みづくりが評価傾向として強まっています。高得点を獲得した企業は、入札ランクや案件獲得に直結するため、DX化に取り組んで80点以上の獲得を目指してみてはいかがでしょうか。

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